こんにちは。「南森町スマイリー歯科」「よしむらファミリー歯科」の院長を務める吉村 佳博です。
虫歯がひどくて残せない状態になったため抜歯となった方もあれば、親知らずが炎症起こして抜歯しなければいけない方など、理由は様々ですが、抜歯は外科処置ですので、手術の後に気をつけることはいくつかあります。
今回は抜歯後に気をつけるべき内容について見ていきます。
1、創部の腫れ
外科処置は、大なり小なり腫れがあるものです。手術した部位のすぐそばだけが腫れる場合もあれば、あごがパンパンの腫れる方もおられます。これは術後の内出血だったり、体が傷を治そうとする反応です。患部を温めると血液の循環が良くなって出血しやすくなりますし、保冷剤などを当てて冷やすと循環障害となって治癒の時間がかかります。少し熱を持った感じがしますので、その熱を濡れたタオルでぬぐって取るだけにとどめておきましょう。
内出血は、皮膚の下に青く見え、重力にしたがって下の方、首の方へ降りて行きます。その時に血液が分解されながら降りて行きますので、黄色く見え、消失していきます。
創部の腫れは下あごの完全に埋もれた親知らず(下顎水平埋伏智歯)の抜歯の場合で、およそ1週間程度で腫れが引くことが多いです。そのため、旅行や人と会うなど、重要なイベントの予定があれば、その後に抜歯を計画すべきです。また1週間以上腫れが続く場合は、創部のに細菌などが入って感染などを起こしている可能性がありますので、手術をした先生に問い合わせてください。
2、術後の出血
抜歯の術後は翌日の朝まではじわじわと出血していたり、うがいをすると少し血が混じることがあります。量が多いように思う場合は、ガーゼ、ティッシュを丸めたものをしっかり創部で噛むようにして30分から1時間程度みます。それでも出血が続くようでしたら、抜歯した先生にすぐに電話するなどして、急いで診察を受ける必要があります。
3、術後の痛みで食事がしにくい、噛みにくい
抜歯した部位は痛みが出ます。痛み止めがほとんどいらない場合もあれば、下顎水平埋伏智歯の抜歯のように大がかりな抜歯では、術後1週間くらい痛み止めを日に3回飲んだという方もおられます。
この痛みによって、歯を抜いた側ではしっかりと噛みにくいことが多く、抜いていない側で噛むことがしばらく続きます。下あごの親知らずの抜歯で2週間程度は噛みにくい状況が続きます。そのため、抜歯する部位については同じ側の上下の歯を1回の手術で抜くことは可能ですが、左右にまたがると、どこで食事を噛んでいいのか困りますので、抜歯は左右で分けることをお勧めします。
4、創部の感染
抜歯したところは、傷をしっかり縫い合わせて閉じることが難しく、血液をそのまま固めたり、血を固めるお薬を詰めて手術を終了することがほとんどです。この血液のかたまりを足場にして歯肉の粘膜が歯のあった部分を覆います。それまでの間に抜歯したところに食べかすがとどまるなどで細菌が繁殖し、赤く腫れたり、膿をもったりすることがあります。
抗生剤の内服や、膿を出す処置が必要なことがあります。長期間放置すると、あご全体が腫れるなどの状況になります。こうなると、入院して抗生剤の点滴投与だったり、さらには全身麻酔をかけて膿の出口を作るといった、大掛かりな処置が必要なことがあります。こういった大変きつい思いをすることになります。早めに歯科医院で相談しましょう。
5、ドライソケット
抜歯する際には血液のかたまりをとどめておき、粘膜で覆われるのを待ちますが、うがいや食事によって、粘膜覆われる前に血液のかたまりがなくなってしまうことがあります。この時に、歯の周囲の骨がむき出しになります。これをドライソケットと言います。風が当たっただけでも痛みが出る場合があります。表面麻酔や口内炎の塗り薬などを入れて、むき出しの骨の表面を粘膜が覆われるのを待ちます。
6、治癒に時間がかかる
傷の治るスピードは個人差がありますので、歯を抜いたところが落ち着くまで時間がかかる場合があります。抜いた部位にブリッジや入れ歯などが入る場合、抜歯してから粘膜がおおよそ落ち着くまで4週間程度は見ておくといいでしょう。この落ち着くのを見越した治療計画を立てことになります。
7、あご先、下唇の知覚鈍麻
下の親知らずを抜く時に、時々神経が近い場合があります。この神経(下歯槽神経)は、それぞれの歯の痛みを感じたりするのと、あご先(おとがい部)および下唇の皮膚の感覚を担当しています。左右それぞれ別です。またお顔の表情の筋肉を担当する神経(顔面神経)は全く別の神経が担当します。
親知らずと下歯槽神経がとても近い場合、抜歯した後にあご先や下唇のしびれ感を感じることがあります。一時的なことが多いのですが、神経の治りは体の中で一番時間がかかります。数ヶ月単位で経過を見ることがあります。
またしびれ感は本人しかわからないので、しびれがある場合は早めに担当医に相談してください。まずはけいけ観察および神経の栄養剤(ビタミンB12)を内服します。星状神経節ブロックという首に注射をしたり、顔と首にソフトレーザーを照射するなどして、顔全体の血流を増加させて治りを促すような治療を行うことがあります。