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歯周ポケットは深くなっても回復する?

投稿日:2020年7月24日 更新日:

歯周ポケットは深くなっても回復する?

こんにちは。「南森町スマイリー歯科」「よしむらファミリー歯科」の院長を務める吉村 佳博です。

歯周ポケットについては色んなお話があると思いますが、今回は歯周ポケットが深くなった際、これを回復させる方法はあるのか?という部分をお話させていただきます。

1、歯周ポケットとは

歯周ポケットとは、歯と歯ぐきの境目にある溝が深さ4mmを超えたものを指します。3mm以下は健常で、どなたにもありますのでご安心ください。

2、歯周ポケットができる理由について

歯周ポケットができる理由は様々ですが、一番多いのは歯周病です。その背景にはまず虫歯で歯がなくなり、特定の歯に力がかかるといった噛み合わせの問題があります。

また歯ぎしりの癖があると、歯を横方向に揺さぶる力になり、歯の周囲の組織に炎症を引きおこします。

歯磨きの仕方の指導が必要であったり、電動歯ブラシで歯肉を傷つけるようなことになると、歯周ポケットが出来てきます。

3、歯周ポケットを浅くする治療について

1)ブラッシング

まずは今の状況に見合った歯ブラシを選び、日々の歯磨きの仕方や時間を見直します。実際に家庭で使っている歯ブラシを持参してもらって歯磨きを実演してもらい、磨き残しがないかどうかを、染色液で染め出しをします。

染め出すことにより磨きにくいところ、磨く時の癖などが明らかとなり、磨き残しの部位をケアするために最適な歯ブラシが処方され、どのようにブラッシングすべきかという説明が歯科医師、歯科衛生士がします。

軽度の歯周病の場合はこの歯ブラシだけでもかなり浅くなるポケットが見られます。

2)プラーク・歯石除去

治療に先立ち、歯周ポケットの深さを測定します。その後、まず歯ぐきより上に見える部分の歯の汚れを落としていきます。

自分では取れないような歯石や磨き残しプラークを除去しますが、これらは超音波スケーラーハンドスケーラーという器具で効率よく落としていきます。音波の振動で痛みや知覚過敏が出るような方にはハンドスケーラーだけで行います。

プラークが少ない方は1回で終わりますが、歯石やプラークの多い方、ハンドスケーラーで処置する方は、何回かに分けて処置していきます。

歯石やプラークを除去した後、専用のブラシとペースト剤を使って表面に残る細かな歯石を磨き落とす処置をします。

3)SRP(スケーリング・ルートプレーニング)

ここまでの治療は、ポケットより上の部分での治療です。それまでの治療で歯ぐきがひきしまることで、歯周ポケットはある程度浅くなりますが、それでも4mm以上のポケットがある場合は、ポケットの中のプラークおよび歯石などの除去を行います。

歯周病原菌は、歯根の表面に形成される「バイオフィルム」という特殊な集まりの中に存在します。よって歯周病原菌を除菌するためには、このバイオフィルムを徹底的に除去する必要があります。

主に歯根の表面にできる歯石は固く、またバイオフィルムも丁寧かつ徹底的な掃除が必要なため、数本ずつに分け、麻酔の注射をしてポケット内の歯石除去を行います。

4)FMD(フルマウス ディスインフェクション)

最近わかってきたことですが、歯周病の原因の一部は、体内で生息することがわかってきました。その場合、SRPなどのクリーニングでは、少しづつのエリアに分けて治療するため、除菌することは到底不可能です。

しかし、このために開発されたのがこのFMD(フルマウス ディスインフェクション)です。洗口剤(クロルヘキシジンなど)によるマウスリンス・歯周ポケット内の洗浄、抗生物質の投与によって体内に入った歯周病の原因菌の除菌を行いつつ、SRPによる機械的清掃を少しずつわけるのではなく、1回で上下左右の歯ぐきのSRPを行います。

ポケットの深い重度の歯周病患者には、歯周病原因菌への治療の達成、1回でお口の中全体を治療するため治療期間の短縮、再生治療を行う場合はその成功率の向上、歯周病に起因する全身疾患の発症予防・治療、といったメリットが期待されていますが、保険診療ではなく自費診療であることと、SRP処置の時間がかかること、その分術後の痛みが出てくることが患者の負担になります。

5)歯周外科治療

SRPでは歯根面について歯石などを除去しますが、さらにポケットそのものを手術で取り除きます。

治癒すると歯肉が下がりますので、歯肉の健康は、安定しますが、歯の見える部分の長さが長くなるように見えます。

6)歯周組織再生療法

歯周病によって失われた歯槽骨(しそうこつ)など、歯を支えている組織を回復する治療法です。

麻酔をしてから、まずポケット内および歯根面を徹底的に掃除します。その空間に組織を誘導する薬剤をその中に入れ、組織を再生させる治療法です。

リグロス、エムドゲイン、Gem21 といった薬剤がよく使われ、半年から1年程度かけて組織誘導薬剤が骨組織を再生し、ポケットも浅くなります。

まとめ

歯周ポケットは、ブラッシング、プラーク・歯石除去、SRP、FMD、歯周外科治療などで腫れぎみの歯ぐきが引き締まることでポケットは浅くなります。しかしポケットの一番底の部分の高さは変わりません。

今現在(2020年7月15日時点)では、出来たポケットを浅くすることができるのは歯周組織再生療法になります。

参考文献
1) M Quirynen, et al. One Stage Full- Versus Partial-Mouth Disinfection in the Treatment of Chronic Adult or Generalized Early-Onset Periodontitis. II. Long-term Impact on Microbial Load. J Periodontol. 1999 Jun;70(6):646-56.

  • 記事の監修

吉村 佳博

「南森町スマイリー歯科」「よしむらファミリー歯科」院長。一般診療から審美・美容まで幅広く歯に関して取り組んでいる。大阪歯科大学を卒業し、大学院では博士課程を修了。JR大阪鉄道病院に就職の後、平成7年6月に「よしむらファミリー歯科」を開院。平成18年5月には「スマイリー歯科」を開院した。

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