こんにちは。「南森町スマイリー歯科」「よしむらファミリー歯科」の院長を務める吉村 佳博です。
ドライマウス(Dry Mouth)は、お口の中が乾燥する、口渇する状態です。口腔乾燥症ともいいます。今なお増え続けている現代病の1つです。
目次
1、ドライマウスの原因
原因は様々あり、なお1つの原因ではなく複数の原因が重なって、より重症化する、ということもよく見られます。
1)ストレスが原因であるもの
ドライマウスの原因の1つは、仕事、人間関係、生活環境などからくる緊張感がストレスが原因となって、「体がきつい」と脳が感じていることの表れの1つとして、お口の渇きが出ることがよくあります。
「ストレスを減らしてください」とお医者さんは簡単に言うことがありますが、ストレスは現代人にとって避けて通ることができない要素になっています。そう簡単に減らせるものではありません。
その状況にあって、しっかり休養をとるなどしてストレスの原因と距離を取ること、もしくは可能であればストレスから回避する(転職や引越など)などもご検討ください。後でも述べますが、内服薬で治療しながら今の生活を続けることも1案ではあります。
しかし、その内服薬によるお口の渇きという新たな問題も存在します。例えば更年期障害、不定愁訴、不眠に悩んで抗うつ剤、抗不安薬、睡眠導入剤を飲み、その副作用でお口が乾くようになった、そのことをストレスに感じて・・・というように、複合的な原因によって、ドライマウスが発症。増悪します。ストレスの原因については対応すべき優先順位をつけること、どのように対応するが必要かもしれません。
2)全身疾患によるもの
まず現代人には、生活習慣病がよく見られます。中でも高血圧や糖尿病をお持ちで、内服薬などで治療している方も多く来られます。
糖尿病は糖分の処理で水分が必要です。高血圧は降圧剤により血圧を下げますが、その降圧によって唾液を分泌する能力が低下し、お口の渇きをもたらします。もちろん、お口の渇きよりも生活習慣病の治療が最優先です。
最近では、自己免疫性疾患という、自分の免疫が自分の体に臓器を攻撃する疾患に悩む方が増えています。その中の1つであるシェーグレン症候群は、涙や唾液を作る組織(涙腺、唾液腺など)を攻撃し、眼の乾燥、お口の乾燥をもたらします。
3)内服薬の副作用によるもの
前述のストレスや全身疾患と密接に関係してきますが、様々な病気のために多くの内服薬で治療を受けておられる方がおられます。これら内服薬を1つ1つ調べてみますと、副作用の項目にお口の渇きに関するもの(口腔乾燥、口渇など)の記載が何かしらあります。
特に神経系に直接作用をかけるようなお薬(抗うつ薬、抗不安薬など)ではお口の渇きを訴える方が多いように思います。
1つの病院だけで全ての内服薬が出ている場合は担当医師が内服薬を把握しているため相談しやすいのですが、複数の病院で治療を受けて内服薬が出ている場合は、お薬手帳を持参して調剤薬局の薬剤師さんに相談して、どの薬の調整を検討すべきか意見を聞き、処方した担当医にそれを伝えて調整を検討してもらうことも1つです。
2、ドライマウスの症状
唾液が減ることで起きるドライマウスには、様々な症状が出てきます。
1)むし歯、歯周病、口臭
唾液はまず食べかすを洗い流す役割があります。唾液が減って食べかすが溜まるとむし歯、歯周病、口臭が増加します。
2)誤嚥性肺炎
唾液は、食べ物に程よく水分を与えて、形を作りやすくしたり、飲み込みしやすくする役割があります。お口が乾くとこれらがしにくくなり、食べ物がまとめられないという状況になります。
一方、飲み込みに関係する筋力が落ちていることをサルコペニアと言います。最近高齢者で増えており、この栄養状態を維持することで、サルコペニアになることを予防することが重要視されています。
お口の乾燥に飲み込みに関係する筋肉の筋力低下より、むせやすくなります。このことは誤嚥下性肺炎などのリスクも上がります。
3)お口の粘膜の荒れ
唾液はお口の粘膜に潤いを与えています。ドライマウスによりこの潤いが減少すると、頰の粘膜舌の粘膜は傷がつきやすくなり、表面のザラザラも縮小して、つるんと平滑な舌になってしまいます。
4)感染症に弱くなる。
眼や口腔など、外にさらされているような臓器は、涙や唾液を流すことでウイルスや細菌の侵入および定着を防いでおり、いわば体を防御するうえでの最前線です。
お口の渇きで、呼吸する空気中に含まれるウイルスなどが定着しやすくなります。
3、どこで相談すればいいか
まず、唾液が本当に減っているのか、基準値以下まで減っているのかについて、唾液の分泌量を計測して評価することから始めます。これは歯科医院か、大きな病院の口腔外科で行います。
刺激の少ないガムを10分間噛んで適宜唾液をコップに吐き出してもらい、10分間で10m以下かどうかを見るガムテスト、もしくは専用のガーゼを2分間噛んでガーゼの重さの変化を計測するサクソンテストなどが簡便な検査方法です。
内服薬の問題であれば、調剤薬局の薬剤師、もしくは処方した医師に相談してみましょう。