こんにちは。「南森町スマイリー歯科」「よしむらファミリー歯科」の院長を務める吉村 佳博です。
目次
1、世界で最も虫歯・歯周病が少ない国は、スウェーデン
日本を含め、先進国と呼ばれる国は、医療水準も高く世界で最も虫歯・歯周病が少ない国は、スウェーデンです。日本では、高齢者において残っている歯(親知らずを除く)の数は平均15本であるのに対し、スウェーデンでは約22本と大きく違います。
この背景には、1970年代のスウェーデンの大学での研究結果があります。虫歯や歯周病の発生率・重症度と口腔ケアの内容との関連について調査研究を行いました。その結果、自宅での毎日のブラッシングと歯科医院での定期的なクリーニングと両方を受けることで、虫歯や歯周病を防ぐ可能性が高まることが明らかにしました。
このことから、スウェーデンでは未成年の歯科検診を無料にしました。子供のうちに予防歯科を習慣にすることで、成人後も歯科検診を受けることが「あたりまえ」になっているのです。
「キシリトール」で有名なフィンランドでも、子供の歯科治療は無料です。子供たちは歯を毎日磨き、虫歯を予防するキシリトールガムを噛むよう教えられています。最近ではキシリトール以外のお菓子を食べ、時には歯磨きを忘れるので、昔よりも虫歯の子が増えつつあるようです。
2、国民皆保険という制度の素晴らしさ
日本は保険証を歯科医院に持参すれば虫歯や歯周病の治療が受けられます。しかもその費用は全国均一で、算定の根拠となるものは、厚生労働省が決めています。
歯が痛い、歯ぐきが腫れたなど、困った時に全国どこでも治療が受けられるというのは、世界的にも珍しく、非常にありがたい社会福祉制度です。
3、虫歯・歯周病について、日本は先進国とは言いがたい
この日本の保険制度では、予防医療について重きをおかれていません。あくまで病気が発生した時に使える「疾病保険」という制度です。定期的な歯石除去も「ある程度」は保険診療で受けることができますが、治療費の制限がありますので、自ずと使える材料や機械、患者さんにかけられる時間も限られます。
しかし、予防歯科に取り組むことは、お口を健康な状態を維持し、健康で元気な生活を送ることにつながります。痛い思いをすることもなく、通院回数も減らせることができます。最終的には医療費の削減にもつながります。
他の国の様子を見てみます。ドイツの歯科治療については、日本よりも高価で、制度も複雑だそうです。しかし定期検診は無料で、大人も子供も年に2回検診を受ける方が多いそうです。
イギリスの歯科医院は、公的な医療機関と私的な医療機関の2種類に分かれています。私的な医療機関と比べて、公的な医療機関では待ち時間は長く、治療の質もそう高くないと言われています。
4、最近の日本でも予防歯科医療の重要性が認識されてきています。
何かモノを買ったり、サービスを受ける際、高品質であればあるほど、お金がかかります。逆もまたしかり。上質な歯科のメンテナンスを受けるには、それなりの費用がかかります。その費用対効果を考えてみましょう。
日本でも保険診療である程度の治療は受けられます。しかし、先ほどの「ある程度」では十分とはいえません。またインプラント治療のほとんどは自由診療ですが、そのメンテナンスも自由診療でしか受けられません。
そして痛くて治療を受けることでかかる治療費と時間を考えると、自由診療のメンテナンスを受けることは、トータルでは安くかつ痛みもない、しっかり十分なメンテナンスが受けられます。このことに気づき、費用対効果でお得だと考えた方が、積極的に自由診療のメンテナンスを受けるようになってきました。
5、矯正治療も小児から開始する方が増えています。
虫歯を予防するためには、歯磨きをしやすい歯並びにすることが重要で、昔は中高生以降、成人を中心に行われていた歯列矯正治療についても、予防歯科の延長としてとらえ、希望される親御さんが増えています。上下のあごの成長発育に合わせて矯正治療を行い、歯並びを整えるということを希望されます。
お子さんの一生にかかわる重要な問題ですし、適切な時期に適切な歯科医療が介入することは非常に重要ですし、お子さんへのプライスレスな贈り物でもあります。保険診療に予防の概念がもっともっと入っていくことになり、これらの流れをより加速するようにできれば、結果的に日本全体の医療費削減効果が期待できると思います。