こんにちは。「南森町スマイリー歯科」「よしむらファミリー歯科」の院長を務める吉村 佳博です。
「最近、歯ぐきがやせてきた、下がってきた」というお悩みを相談される方が時々おられます。年齢層は幅広く、高齢者とは限りません。
今回はこの歯ぐきが痩せることの原因と、治療方法について見ていきます。
目次
1、歯ぐきがやせる理由
1)毛質がかたい歯ブラシを使っている
ドラッグストアで歯ブラシのコーナーを見ると、どれが一番いいのか迷うくらい多くの種類の歯ブラシが販売されています。歯ブラシのヘッドが小さいものから大きなもの、グリップが持ちやすいものなど、様々です。
その中で、ブラシ毛の硬さについて見てみると、柔らかいものから、ふつう、かため、と3種類に分かれます。そして、かたい毛の方がしっかり磨けるのではと思って使われる方がおられます。
歯磨きはとても大切で、おろそかにすると虫歯になったり歯肉炎など歯ぐきを腫れる原因にはなります。しかし毛先が歯だけに当たればいいのですが、どうしても歯ぐきにもブラシが当たってしまうため、歯ぐきを痛めてつけいる方がおられます。
2)歯磨きの力が強すぎる
歯ぐきがやせる最も一般的な原因がこれです。歯の付け根あたりを力強く磨きすぎて、歯ぐきをやせさせてしまうことがあります。
歯ぐきのふちはとても薄くて軟らかいので、刺激に弱い部分です。歯ブラシの毛先がこの部分にゴシゴシと当たることで、徐々に歯ぐきが痩せてきます。しっかり歯磨きをしようとすると逆効果になってしまうのです。
3)歯ぎしり、くいしばり
寝ている時に歯ぎしりや食いしばりをしている方は多いようです。これらは無意識のうちに見られ、食事の時とは違ってかなり強い力がかかることが多いです。
また、食いしばりはスポーツやストレスを感じている時などにも見られ、瞬間的に大きな力がかかります。この時、歯を支えている歯の周囲の骨が負荷を受けると、それにともなって歯ぐきも下がってしまうのです。
この対処法としては、歯ぎしりや食いしばりは無意識ですので、自分で意識して改善することが不可能です。
そのため、歯科医院で歯型を取って歯にぴったりと合ったマウスピースを作製します。これを寝ている間やスポーツをする時に歯に装着し、歯を保護します。市販のマウスピースを作るキットもありますが、咬み合わせの微妙な調整が必要であることを考えると、あまりお勧めはしません。
4)歯周病が進行している
歯周病の原因は喫煙のほか、歯磨きでは磨ききれなかった歯周病の原因菌が食べかす(プラーク)を栄養源にして増殖し、歯ぐきに炎症をひき起こすことにあります。そのため、歯と歯ぐきの境目にプラークが付着したままになると、歯ぐきが炎症を起こし、歯周ポケットが深くなります。
正常な場合でも3 mm程度の歯周ポケットがありますが、これが深くなるとさらに汚れが着きやすく、歯周病の原因菌が増殖しやすい環境となり、歯周病が進行します。
また、歯ぎしりなど歯の横方向へ力がかかることにより、歯を支えている骨に炎症が起きて少しずつ骨の高さが下がっていきます。その結果、歯ぐきの位置にも影響を及ぼし、歯ぐきが下がります。
5)歯列矯正治療
歯列矯正治療は、どの歯をどのように動かすかという治療計画を立て、歯に負担がかからない様に少しづつ歯を動かして歯並びを整える治療です。
無理のないスピードで歯を動かすのであれば問題はないのですが、期日までに治療を終わらせたいとの希望により必要以上の力をかけてしまうと、歯の骨に負担をかけてしまい、歯ぐきが痩せてしまうことあります。
6)加齢によるもの
歯磨きも適切に行なわれ、歯の汚れもなく歯周病でもない場合であっても、年齢とともに歯ぐきが痩せてくることが知られています。
ある研究によりますと、年間に平均して約0.25[mm]ずつ歯ぐきが痩せてくるという結果があります。
7)歯ぐきの外科治療によるもの
歯の根の先に出来た膿の袋を取り除くときや、埋まっている歯を抜くときなど、歯ぐきを切開しなければ出来ない治療があります。切開した歯ぐきは、元の位置に戻して縫合しますが、切開した影響で歯ぐきが痩せてしまうことがあります。
2、下がった歯ぐきの治療方法
まず歯科医師や歯科衛生士に、お口全体の歯ぐきのポケットの深さを評価してもらいましょう。
3mm以下は正常です。そして、自分にとってふさわしい毛の硬さ、そしてブラシの持ち方と歯への当て方を指導してもらいましょう。部位によってブラシの当て方が異なりますし、ブラシを当てる癖も皆さんそれぞれ異なりますので、それを踏まえたうえで、日々の歯ブラシの使い方を変えてみましょう。
矯正治療によるものであれば、まずは治療計画について無理がないかを歯科医師に相談してください。できれば治療前のカウンセリングの段階で矯正方法のメリット・デメリットと自分にはどの様な方法が適応で、どれくらいの治療期間が必要なのかを確認してから治療方法を選択しましょう。
下がった歯ぐきを戻す再生療法という方法もあります。主に上あごの奥歯の内側から歯ぐきを切り取り、歯ぐきが下がった部分に移植する「結合組織移植術」や、歯ぐきを引っ張って歯の根元を覆うなど「歯肉弁移植術」などの方法があります。
ただし、喫煙習慣があったり、採取できる歯ぐきの厚みや形状などにより、これらの治療が難しいケースもあります。