こんにちは。「南森町スマイリー歯科」「よしむらファミリー歯科」の院長を務める吉村 佳博です。
新型コロナウイルス感染対策のため、マスクを日中つけるようになりました。そのために口元が隠せるようになり、メイクや口紅など、口元への意識がややおろそかになり、緊張感が薄れてきた、との声をよくききます。
中には、無意識のうちに口が若干開いている方もおられるようです。この場合、無意識のうちに口からの呼吸、口呼吸になっています。
鼻呼吸よりも口呼吸の方が多くの空気が通るため、口から呼吸する方が楽だったりします。今回は、マスクの中での口呼吸についてふれてみます。
目次
1、本来の呼吸は鼻での呼吸
鼻は呼吸をする上でとても重要な機能を持っています。鼻毛が大きなゴミやホコリを取り除き、鼻の粘膜と細かい毛である「線毛」が細かいホコリ、花粉などを取り除きます。
これら取り除いた雑菌などは、鼻糞(鼻くそ)、鼻汁(鼻みず)として外に排出します。いわば、空気清浄機の役割を果たしています。
また、鼻の粘膜は乾いた空気を加湿する役割があります。鼻の中には上鼻甲介、中鼻甲介、下鼻甲介という「ひだ」があります。これらが吸い込む空気に適度な湿度を与え、のどや気道の乾燥を防ぎます。
2、口呼吸になると、どのようなことが起きるか
花粉症やアレルギー性鼻炎といったアレルギー体質の方が増えています。鼻の通りが悪くなると、口から呼吸をするようになります。
しかし、口呼吸ではこの鼻の持つ空気清浄機にあたるものが無いため、汚れた空気が口から直接のど、気道を通って肺に直接送られてしまいます。加湿もされませんので、より気道を痛めやすくなります。
そしてインフルエンザや風邪などの空気感染の病気にかかりやすくなってしまいます。口呼吸によって慢性の扁桃炎になると、免疫系が乱れ、口腔内に常に存在する細菌(口腔内常在菌)のうちわけや量が変わり、誤えん性肺炎になるリスクが上がります。
口呼吸では通る空気の量が多いため、二酸化炭素を多く吐き出しやすくなります。肺の中は二酸化炭素がある程度存在していることが必要で、それよりも吐き出して二酸化炭素の量が少ないといわゆる過換気症候群という状況になります。脳貧血、過呼吸、情動不安を起こすことがあります。
一方で、咬み合わせに問題がある場合:例えば奥歯で噛み合うけれども前歯で咬みきれない状況の場合は、意識しないと口元を閉じる状態が続かないことがあります。それが寝ている間の舌の筋肉にも影響し、睡眠時に舌根沈下を起こし、イビキや睡眠時無呼吸を引き起こす原因と言われています。
口呼吸により、前歯には乾燥した空気が当たるようになり、歯ぐきが乾燥します。歯ぐきにダメージが当たるために歯肉炎、歯周病が起きやすくなるとともに、虫歯になりやすい状況になります。
3、どうすれば口呼吸を避けることができるか
ここまで書くと「ではどうすればいいのか?」という疑問が出てくるでしょう。
1)鼻の病気の治療で十分呼吸できるように
鼻から十分呼吸できることが必要です。アレルギー性鼻炎や蓄膿(上顎洞炎)、扁桃が腫れている、などがある方は、耳鼻いんこう科で相談してみましょう。
内服薬、点鼻薬、もしくは手術療法によって改善できるかもしれません。
2)口元を意識して挙げる
道具も使わず、どこでもできる一番簡単な方法として、マスクの下でも意識して笑顔をしっかり作ることです。笑顔になることで、口角が上がります。
口角が上がることで鼻の穴が左右に広がりますので、空気を取り込みやすくなります。もちろん口元は結んでおきます。
3)口元の筋肉、舌の筋肉を鍛える
次にできることは、口元の筋肉、舌の筋肉を鍛えることです。口元をあげることもそうですし、あいうべ体操、という舌の動きを鍛える運動があります。
4)咬み合わせの治療
咬み合わせに問題がある方は、歯科医院で歯科医師、歯科衛生士に相談してみましょう。
歯列矯正治療だけで改善できる場合もあれば、顎変形症の診断であごの骨を切るような手術が必要な場合もあります。
5)いびき、睡眠時無呼吸の検査と治療
いびき、睡眠時無呼吸がある方は、専門内科での相談が必要です。睡眠時の呼吸状態をモニタリングし、どの程度のいびき、睡眠時無呼吸があるか解析する必要があります。
その治療として下あごを前に出させるような装置を歯科医院で作成することや、寝ている間に空気を送り込むCPAPという機械を装着する治療が行われることがあります。