こんにちは。「南森町スマイリー歯科」「よしむらファミリー歯科」の院長を務める吉村 佳博です。
自転車や自動車とぶつかった時、スポーツや運動でボールが顔面に当たった時、顔を地面や壁などで強く強打すると、前歯が折れたり、抜けたりしてしまうケースがあります。
この際、どうしていいのかわからず取り乱してしまうことも考えられますが、焦らずに対処すれば欠けた歯や抜けた歯をまた戻せる可能性があります。
1、歯よりも頭部外傷など、優先すべきこともあります。
歯が脱臼した場合の処置も急を要しますが、交通外傷などの場合は、頭部の髄液漏や内臓出血などへの対応が患者さんの生死にもかかわるため、より対応の優先度は高くなります。
歯への対応を急ぐことより、救急車を要請すべき事態かもしれません。その判断は冷静に行ってください。
2、抜けたり欠けた歯にやってはいけないこと
歯を保存するために歯にとってダメージとなることは避けないといけません。
1)欠けた部分や残った根を触らないでください
確かにとても気になる部分かと思いますが、欠けた部分や残った根を舌や指で触ることは避けてください。
触ることで、一緒に入った汚れ、食べかす(プラーク)を中に押し込む危険性があります。
2)市販の接着剤で仮止めすることもやめてください
週末、夜間に前歯が欠けたりすると、歯科医院はあいておらず、見栄えが気になったりすると思います。少し欠けただけだからと瞬間接着剤でくっつけました、という方がおられますが、まず強度と見た目の点で歯科専用の接着剤より落ちます。
また歯の神経(歯髄)に瞬間接着剤が入ると、神経にとってダメージが大きく、保存できたかもしれなかったものが、神経を取る(抜髄)ことになりかねません。
3)綺麗に洗ったり、水道水やミネラルウォーターにつけると、歯の細胞が死にます
抜けた歯を保存する液体について、歯の周囲の組織や歯の中にある神経(歯髄)にとって、水道水やミネラルウォーターは危険です。水道水やミネラルウォーターと血液との大きな違いは、その浸透圧にあります。歯の周囲の組織や歯の中にある神経の細胞にとって最適な浸透圧というのがあり、浸透圧に差があると、細胞が壊死してしまいます。
また綺麗に洗うのも、この細胞をこすり落とすことになり、再び歯が着くことを阻害することになってしまいますので、なるべく抜けたままの状態にそっとしておくべきです。
3、折れた歯や抜けた歯への対応
1)かぶせ物や詰め物の部分が取れた場合
かぶせ物や詰め物がとれた時、かぶせ物や土台に破折や変形がなければ、そのままつけ戻すことができることがあります。しかし、どこかが破折していたり、かぶせ物や詰め物の下に虫歯があったりすると、その処置をまず行って、新たなかぶせ物や詰め物をすることがほとんどです。
ご自身で接着剤をつけて戻すなどせず、そのままの状態で歯科医院に持参してください。レントゲンなどで状況を確認して最善の治療方法を検討します。
2)抜けた天然歯の復元はできますか?
天然歯の場合はどこで折れたのか、どの程度残っているか、歯を支える組織の状況などが判断基準になります。そのままつけ戻して固定することが可能な場合もあれば、歯の神経をとって、差し歯にせざるを得ない場合もあります。
また歯周病がひどく、もともと抜歯が必要だった歯が今回のイベントで抜けてしまった、という場合は歯をつけ戻すことは無理ですので、抜歯したと想定してブリッジや入れ歯、インプラントなどその後の治療計画を考える必要があります。
いずれにせよ、どのような治療が可能かは歯科医師の判断と技術力によりますので、早めに歯科医院で相談することをお勧めします。
3)天然歯が折れたり、抜けた場合
不意な出来事で折れたり、抜けたりした歯も、状況によっては元のように治せる可能性があります。この時、学校内であれば保健室には歯の保存液、生理食塩水(約0.9パーセントの食塩水)、があります。24時間程度の保存が可能です。学校外でのイベントであれば、コンビニなどで一番手に入りやすい牛乳などに浸して、乾燥を予防するというのが第一です。
しかしコンビニが遠い、自宅の牛乳を切らしているなど、すぐに保存液が用意できない緊急事態もあります。その場合は歯を口の中に含んでおく方法もあります。間違って飲み込まないように注意しましょう。
4)処置までのタイムリミットは2時間
完全に抜けてしまった場合、再度つけ戻すことが可能な場合があります。その処置までのタイムリミットは受傷後2時間以内と言われています。
早めに歯科医院に連絡して、いつ受診したらいいか、それまでの間はどのようにすればいいか、を尋ねてください。